玄米に含まれる残留農薬の種類と玄米食の注意点

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通常は、玄米を精米して白米にしてから食べることが多いと言えますが、あえて玄米を精米せず、そのまま炊飯して食べるという人も少なくありません。玄米は健康食として人気がありますが、白米に比べたっぷりと外皮が残ったままの玄米に、残留農薬の心配はないのでしょうか?玄米に含まれる農薬に触れつつ、玄米食の魅力や注意点について解説します。

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玄米とはどんなもの?

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秋の収穫期には、田んぼで天日干しされている稲穂を見かけることがあるでしょう。玄米は、稲穂の先に実った籾から、籾殻だけを除去した状態のお米を指します。お米は、一番外側の籾殻の下層が果皮、次に種皮、そしてアニューロン層があり、その下にサブアニューロン層、最後に胚芽・胚乳という順序を成す重層構造になっています。

したがって、玄米は果皮から胚乳までの6種類の構造を保持していると言えるでしょう。一方、白米は、サブアニューロン層と胚乳のみを指し、この2つより上層部分は全て取り除かれてしまうのです。

玄米がヘルシーフードとして好まれる理由

玄米に含まれる胚芽とぬかには、ビタミンやミネラルの含有量が多く、栄養豊富な食物として高い評価を得ています。また、セルロース(不溶性食物繊維)も多く含まれており、腸の蠕動運動が活性化され、便通が良くなるほか、体内に溜まった毒を排出するデトックス効果もあると言われています。

さらに、玄米は硬い上皮構造に覆われているため、噛み応えがあります。これにより、咀嚼の回数が増えることによって満腹中枢を早く刺激することから、白米と比べてさほどカロリーが低くないものの、ダイエット効果も高いでしょう。

このほか、外皮にしっかり守られた玄米は、長期間常温で放置しても白米より味が落ちにくく、保存食としても重宝されています。

玄米と白米ではどちらに残留農薬が多く含まれるか?

農薬が表面に付着する野菜や果物と異なり、玄米の残留農薬は、ぬかや胚芽の奥深くに残ってしまうため、丹念に洗ったところで除去できません。農薬は脂に溶けやすいことから、どうしてもぬかや胚芽に溜まりやすいのです。

特に、ぬかには残留農薬の70パーセントから90パーセントが含まれるという報告もされています。この点、白米は精米されているため残留農薬が含まれる層が削除され、玄米に残る農薬の濃度を半分から9割以上低下させると言われています。

したがって、白米は洗米と炊飯によって、残留農薬の大半を除去できるでしょう。玄米も、炊く前に徹底的に研げば、7パーセントほど残留農薬を減らせます。さらに、炊飯によって玄米の残留農薬を約4パーセント除去できるでしょう。

玄米に含まれる残留農薬の種類と毒性

玄米には、殺虫・殺菌のために使用されるエトフェンプロックスやフェノブカルブをはじめ、イソキサチオンやフサライドからイプロベンホス等まで、約18種類の農薬が残留していると言われています。こうした農薬を大量に摂取すれば、視覚異常や急性中毒から悪性腫瘍や中枢神経障害に至るまで、様々な疾病に罹患するおそれがあります。

しかし、食品衛生法の基準値を超える量が含まれていなければ、このような疾病に至るリスクは高くありません。市場に出回っているお米は、法律で定められている基準値以下なので、玄米をそのまま食べても安全性に問題はないでしょう。

また、収穫の約1ヶ月半前とされる出穂期までに農薬散布が完了していれば、エトフェンプロックスといった一部の農薬を除き、お米に残留する農薬は少ないとされています。つまり、収穫間近に農薬散布が行われない限り、農薬を使用したお米であっても、さほど残留農薬の影響を心配する必要はありません。

玄米を安全に食べるうえで知っておくべきこと

先述した通り、残留農薬は法律で定められた安全基準より低く、きちんと研いで炊飯すれば、直ちに病気になる心配はありません。もっとも、便通を良くしたり、デトックス効果を高めるなど健康保持のために、あえて精米せず玄米を食べるのだから、残留農薬をできるだけ減らしたいと考えるのは当然だと言えるでしょう。

基準値以下であっても残留農薬が気になるなら、お米の栽培期間の全てにわたって、エトフェンプロックスのようなお米に残りやすい農薬を散布して育てたお米は避けたいものです。他の農薬についても、出穂期以降に散布した米は、摂取しない方が良いでしょう。

ただし、消費者が農薬散布期間を正確に把握することは困難です。そこで、無農薬や有機栽培の玄米を選ぶことをおすすめします。農薬不使用のお米は、人体に農薬を取り込むリスクを回避できるだけでなく、土壌の微生物が農薬の殺虫成分によって死に絶えることがなく、有機肥料を微生物が分解し、多種類の微量元素を作り出すことにより、稲穂を豊かに実らせるのです。

このように、無農薬や有機栽培を謳った玄米を購入すれば、残留農薬の弊害を気にする必要はありません。ただし、残留農薬が無い玄米であっても、玄米には元々フィチン酸という成分が含まれており、体内の亜鉛・カルシウム・鉄分などのミネラルと結合して、尿内に排出してしまうというデメリットがあります。

したがって、玄米を食べる際には、同時にミネラル分を多く含む海藻類や野菜を摂取するよう心がけましょう。また、玄米にはアブシジン酸(ABA)という成分も含有されています。アブシジン酸には、代謝を司る器官に悪影響を与える毒性があり、炊飯前に水にさらしてアブシジン酸を不活性化することが必要です。

夏場は半日くらい、冬場はまる1日水に浸けておきましょう。水にさらす時間的余裕がなかったら、炊飯前に玄米を炒ることにより、同様の効果が得られます。さらに、玄米を消化するには白米より時間がかかるため、よく咀嚼しなければなりません。

しかし、よく噛んだつもりでも、玄米の外皮が残ってしまうことも少なくないでしょう。玄米の外皮は未消化のまま体外に排出されますが、消化器官を通過する際に、硬い外皮が胃腸の粘膜を傷つけることもあります。したがって、胃腸が弱っている時や、消化器系の疾患がある場合は、玄米食を控えた方が良いかもしれません。

玄米の特徴を理解して安全な食べ方を追求しよう!

玄米は、便通を良くしたり、デトックス効果を期待できたりするヘルシーフードです。ただし、農薬を使って育てた玄米は、安全基準以下とはいえ、白米よりも残留農薬の濃度が高いことを否定できません。せっかく健康食品として玄米を食べるなら、無農薬や有機栽培のお米を選び、適切な調理方法で炊くようにしましょう。

また、ミネラル分の多い食品と一緒に食べるなど、元から玄米に含有される毒素への対策も欠かせません。

参考>残留農薬
https://www.nouyaku-bunseki.net/faq/